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Aさん
10社ほど応募する予定がある女子学生。友人は20社以上応募すると聞き、応募数を増やした方が良いのかと不安になっている。
神奈川トヨタ自動車 リクルート室 室員
神奈川トヨタ自動車の採用担当。 トヨタモビリティ神奈川で営業職を経験したのち、採用担当へ。 現場経験を活かし、より”リアルなノウハウ”で就活生をサポートします。
すみません。就活って何社受けるのが正解なのでしょうか?
友人に「もっと受けるべきだ」といわれて、不安になってしまって……。
何社受けるべきかは、人によって変わりますね。
あなたは何社受ける予定でいますか?
今考えているのは10社です。
なるほど。それは多いか少ないか判断が分かれそうですね。
微妙なラインでしょうか?
そうかもしれません。
せっかくなので、データも交えて、10社しか受けない状態が良いのか悪いのか、詳しく見ていきましょう。
よろしくお願いします!
就活で10社しか受けないのは平均より少ない
就活で10社しか受けないというのは、平均値に比べると少ない方といえるでしょう。
公益社団法人全国求人情報協会による「2022年卒学生の就職活動の実態に関する調査」では、大学生のプレエントリー20.4社、企業説明会参加18.6社、書類選考12.7社、面接などの選考11.7社となっています。
上記はあくまでも平均値なので、これより多いという方も、少ないという方もいるでしょう。
しかし、10社しか受けないということは、単純に自分の価値観に合う企業と出会える機会や選択肢が少なくなることや、内定をもらえる確率が低くなることを意味します。
10社しか受けなくて良いケースもある?
10社しか受けないって、少ないんですね……。
平均と比べると少ないですが、冒頭でも述べた通り、何社受けるべきかは人によって変わってきます。
そういえば、そう言っていましたね!
どのような人なら少なくても良いのでしょうか?
ではここで、10社だけでも良いケースについて見てみましょう。
内々定や内定を既にもらっているケース
既に応募している企業から内々定をもらっている方であれば、受けるのが10社でも構わないでしょう。
10社しか受けないことの最大のリスクは、全ての面接に落ちてしまう可能性があることです。
10社しか受けないと決めていた方が、万が一すべての面接に落ちてしまうと、その出遅れを取り戻すのは大変です。
しかし内々定が出ているのであれば、取り消しになる可能性もゼロではありませんが、ほぼ内定が出ているようなものです。
そのため、10社のみに絞っても問題はないでしょう。
希望する企業が倍率の低い企業で固まっているケース
希望している企業が倍率の低い企業ばかりという方も、10社以上にこだわらなくても大きな問題はないでしょう。
大手企業だと、倍率が100倍は当たり前で、200倍や1,000倍ということもあり得ます。(※)
その中で内定人数は数名なので、同じ就活生の中でもとりわけその企業に適していると思われた人でなければ、なかなか面接まで進むこともできません。
一方、倍率があまり高くない企業であれば、内定が得られる確率は高まります。
もちろん、より多くの企業を受けた方が良いのは確かですが、ある程度は安心だといえるでしょう。
倍率は公開されていない企業も多く、就活時には判断がしにくいので注意が必要です。
例外として、就職したい業界・業種が決まっている方は10社に絞り込んでも良いでしょう。
1業界で10社受ければ、1社受けるごとに業界の傾向が見えて、対策も徐々に万全になっていきます。
しかし、複数の業界で10社受けるような場合は、対策がしづらくなります。
現在、複数の業界や業種で10社を希望しているという方は、希望している企業の数を増やすのがおすすめです。
(※)東洋経済「就職四季報総合版」2023年版をもとに記載。
就活生が10社しか受けないことのメリットとデメリット
就活生が10社しか受けないことには、メリットもデメリットもあります。
ここでは、メリットとデメリットについて見ていきましょう。
10社しか受けないメリット3選
10社しか受けないメリットは、下記の3つです。
- 企業の分析・対策の時間を増やせる
- 安定した軸で就活を進めやすい
- スケジュール管理が容易で負担が少ない
企業の分析・対策の時間を増やせる
まずメリットとして挙げられるのが、1社あたりの分析や対策の時間を増やせることです。
内定をもらう可能性を高めるには、その企業を分析し、選考対策を練る必要があります。
しかし、何十社も受ける場合は、1社あたりにかけられる時間が減ってしまうでしょう。
時間に追われて、満足に対策ができないまま、落ちてしまったという方も多いです。
10社しか受けないと決め、応募する企業を絞っておけば、その分1社あたりにかけられる時間が増え、より良い対策を練ることができるかもしれません。
安定した軸で就活を進めやすい
安定した軸で就活を進めやすいというのも、メリットの一つとして挙げられるでしょう。
就活において、「なぜこの職種や企業を選んだのか」、「なぜ自分に向いていると思ったのか」など、軸を定めることは大切です。
軸がしっかり定まっていると、書類の内容や受け答えが明確になり、エントリーや面接などの選考シーンで有利です。
モチベーションも高めた状態で、安定して就活を進められるかもしれません。
また、軸が安定していれば、特に興味がない企業に内定を受けて就職しミスマッチによる早期離職といったことも防げます。
スケジュール管理が容易で負担が少ない
就活で受ける企業が少なければ、スケジュール管理がしやすく、負担を減らすことができます。
就活は今後の人生を大きく左右するイベントなので、楽をしたいという考えだけで受ける企業数を減らしてしまうのは良くありません。
しかし、多く応募するということは、それだけスケジュールがタイトになります。
面接の日程が被ってバタバタしてしまったり、企業分析で忙しい日々が続いたりと、負担も増えるでしょう。
自分の容量を超えるほど詰め込むと、焦って上手くいかないことや、思わぬミスに繋がることも考えられます。
スケジュール管理が得意でない方、負担を増やし過ぎると潰れてしまいそうな方、決まった企業に専念したほうが効率が良いと感じる方などは、受ける企業の数を絞った方が上手くいくこともあるでしょう。
10社しか受けないデメリット4選
10社しか受けないデメリットは、下記の4つです。
- 内定を受ける確率が下がる
- 精神的な負担が大きい
- 場数を踏むことができない
- 企業との出会いが減る
内定を受ける確率がぐっと下がる
10社しか受けないと、内定率がぐっと下がることは覚えておきましょう。
場合によっては、10社全ての企業からお断りされてしまうこともあり得ます。
就活は大学受験と違って企業と価値観が合っているかが選考基準にもなるため、10社も受ければ1社には内定をもらえる、というような期待はできません。
企業によっては5倍や10倍、100倍と倍率があるため、大手企業を目指すほど、内定がもらえる確率は下がってしまいます。
全て不採用になったとしても、別の企業に応募はできますが、応募期間が過ぎているなど出遅れた状態になることもあるため、内定をもらえる確率も厳しくなるはずです。
内定がもらえない時期が長引くと心理的な負担も大きくなり、「受かればどこでも良い」といった投げやりな考えで、就活を進めてしまうこともあり得ます。
精神的な負担が大きい
10社しか受けないことで、1社あたりにかけられる時間が大きいため、思い入れが強くなることから精神的な負担が大きくなることもデメリットです。
10社に絞ったことでスケジュール管理が容易になる分、最初の内は精神的にも余裕があるでしょう。
最終面接など、選考が進むにつれて、そのプレッシャーも大きくなるでしょう。
また、もし不採用となった場合は、焦りや不安を強く感じるかもしれません。
その点、20社や30社など受ける方は、1社あたりの期待値が大きくないため、落ちてもまだ次があると、失敗を恐れずチャレンジすることができ、精神的な負担を少なくできます。
場数を踏むことができない
10社しか受けないことで、場数を踏めないというデメリットも覚えておきましょう。
内定をもらうためには、特に面接の場数を踏むことが大切です。
多くの選考を経験することにより、面接ではどのような質問がされるのか、回答に詰まったとき、どのようにリカバリーすれば良いのかなどがわかってきます。
面接では緊張して上手く話せないという方にとっても、場数を踏めば慣れていき、上達できる機会が増えます。
面接以外でも、エントリーシートのより良い書き方、企業分析のより良い方法など、多くの企業に挑戦することで得られる気付きが多くあるでしょう。
企業との出会いが減る
応募する数を減らしてしまえば、企業との出会いも減ってしまいます。
最初は興味が薄かった企業でも、詳しく調べたり、企業説明会に参加したりすることで、「今まで知らなかった職種だけど興味を持てた」「この企業の社員のように自分も働いてみたい」「この企業を第一志望にしたい」と、思えることがあるかもしれません。
また、企業説明会や面接などで詳しく話を聞いている内に、「志望していた職種や企業が想像していたものと違っていた…」となってしまうこともあり得ます。
特に軸が定まっていない方は、応募する企業を減らすほど、出会いが減ってしまう点に注意が必要です。
ありがとうございます。
10社しか受けないのはデメリットの方が大きいと感じたので、応募する企業を増やそうと思います。
受ける企業が多いとその分大変になりますが、就活は人生を左右する大事なものなので、ぜひ頑張ってみてください。
就活に関するよくあるQ&A
10社しか受けないという方から寄せられることが多い質問には、どのようなものがあるでしょうか。
ここでは、就活に関するよくある質問と、その回答をご紹介します。
内定を獲得するのはやはり大変ですか?
内定を獲得する難易度は、個人によって大きく異なります。
就職プロセス調査(2024年卒)「2023年8月1日時点 内定状況」のグラフによると、2022~2024年卒の大学生は、4月1日時点で38.1~48.4%の方が内定を獲得しています。
このように、すぐ内定を獲得できる方には、下記のような特徴があります。
- 的確な自己分析が可能
- 軸が定まっており、適性が高い企業に応募している
- 志望度の高さや熱意を伝えられる技術がある
- 倍率が低い企業も多めに受けている
「10社しか受けない状態でもすぐ内定を獲得したい」、という方は、上記のような要素を備えているかどうかを確認してみましょう。
就活では何社受けるのが普通でしょうか?
就活で平均何社受けているのかは、おおよそ16社ほどといえるでしょう。
例えば、株式会社リクルートの『就職白書2023』において、2023年卒の学生がエントリーシートなどの書類を提出した平均数は16.02社と出ています。
プレエントリーをおこなった平均数は30.98 社となっており、プレエントリーまでおこなった学生を含めると、受ける会社の数はより多くなるでしょう。
しかしそれでも、内々定・内定を取得するに至った平均数は2.52 社です。
10社以上受けていても、内定を獲得するのはなかなか大変だということがわかります。
どの時期から就活を始めれば良いでしょうか?
就活を始める時期は、大学2年生の1~2月頃が適しています。
就活解禁は大学3年生の3月頃が多いですが、外資系企業のように、大学3年生の4月頃からインターンシップの募集を始めるところも珍しくありません。
大学3年生になってからと悠長に構えていると、情報を集める時間や、吟味する時間が足りなくなってしまいます。
大学2年生の1~2月頃を目安に、就活を意識するようにしてみてください。
何月までに内定があれば安心でしょうか?
内定は、大学4年生の7月までにあると安心です。
もちろん、大学4年生の3月という卒業間際であっても、内定はもらえる可能性があります。
しかし、大学4年生の7月にまで差し掛かってくると、焦りも出てきます。
同じ就活生が内定をもらう中、自分は志望していた企業には落ちているというような状況だと、企業選びも雑になってしまいがちです。
どこでも良いから内定が欲しいという気持ちでいると、将来的な就職のミスマッチにもつながります。
そのため、大学4年生の7月までにはどうにか内定を獲得しようという意識で行動すると良いでしょう。
どのような人が就活に落ちやすいですか?
就活に落ちやすい方には、以下のような特徴があります。
- 協力せずに一人で就活している
- 大手企業ばかり応募してしまっている
- 業界の知識が不足している
- 企業分析が不十分
- 自己分析ができていない
- 面接の場数を踏んでいない
これらの特徴に当てはまる方は、就活の進め方の見直しや、欠点を克服するように心がけてください。
特に、就活は協力が大切です。
就活生同士はライバルと思ってしまいがちですが、協力し合えば、情報交換で不足している業界の知識を補えたり、企業分析や自己分析の精度を高められたりと、内定する確率を高めることにつながります。
OBや、ゼミの教授、部活のコーチ、既に内定をもらっている友人などから客観的なアドバイスを受けることも有益です。
一人だけで進めるのでなく、協力してくれる方を探してみてください。
就活は10社以上受けるのがおすすめ
この記事では、就活生が10社しか受けないことが、就活にどのような影響を与えるのか詳しく解説しました。
16社ほど受けるのが平均値のため、10社では少ないといえます。
あえて受ける企業数を減らすことには、メリットもありますが、デメリットもあり、おすすめできません。
就活は今後を左右する大きな事柄であるため、スケジュール管理ができない、軸がぶれてしまいそうで不安など、よっぽどの理由がない限りは16社ほどを目安に受けてみましょう。