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Bさん
最近就職活動を始めたものの、就職したい業界・企業が分からず焦りを感じている学生。自分がどのような仕事に適性があるのか知りたいとも思っている。
神奈川トヨタ自動車 リクルート室 室員
神奈川トヨタ自動車の採用担当。 トヨタモビリティ神奈川で営業職を経験したのち、採用担当へ。 現場経験を活かし、より”リアルなノウハウ”で就活生をサポートします。
就活中はエントリーシートの作成や就活セミナーへの参加などで忙しいと思いますが、業界研究も進めていますか?
正直、業界研究は優先度が低くなりがちというか…。やり方もよく分かっていないです。
業界研究は就職活動においてとっても大切なステップなんですよ。
自分が将来働くかもしれない業界について知ることで、適切な志望動機や企業選びができるようになって就活がよりスムーズに進むはずです。
なるほど…。でも何をどう調べればいいんでしょうか?コツみたいなものがあれば知りたいです。
業界研究のやり方は決して難しくありません。今回は、具体的な手順やコツを確認していくことにしましょう。
業界研究とは
業界研究とは、特定の業界に焦点を当て、その業界全体様々な情報を集めて分析することを指します。
具体的にはその業界が「どのような業界なのか」「競合関係はどうなっているか」「業界が成長していく見込みがあるか」などの情報を分析していきます。
業界研究を始める時期について決まりはありませんが、4年制大学の学生であれば3年生の春ごろから始める学生が多いようです。
まずは、世の中に存在するさまざまな業界を知ることからスタートしましょう。
各業界には独自の特徴があるので、志望する企業の業界以外についても広く情報を収集することでより的確な意思決定が可能となります。
業界研究を行う目的
業界研究を行う主な目的は以下のとおりです。
- 志望する業界の理解を深める
- 自分が業界に対して適性があるか判断する
志望する業界の理解を深める
就職活動で業界研究って本当に必要なんでしょうか?企業研究だけで十分な気もするんですけど…。
企業研究も大切ですが、業界研究も同じくらい重要です。
企業研究はその企業自体の理解を深めるのに対して、業界研究は広い視野で志望する企業が属している業界全体を理解する役割があります。
そうなんですね。でも、やっぱり業界研究の重要性がいまいち分からないです…。
志望する業界のトレンドや特徴が分かると、自分の適性や目標に合った企業を見つけやすくなるんですよ。
業界全体の動向を理解することで、将来的に「どのようなキャリアを積んでいくのか」 や成長の可能性も見えてきます。
なるほど、業界全体の動向を把握することで企業への理解も深まるんですね。
そうです。業界研究で得た情報は、面接や選考で自分の強みをアピールするのにも活かせますよ。
自分がその業界に対して適性があるか判断する
先ほど少し触れましたが、業界研究はただ単に業界のことを知るだけでなく、自分がその業界に向いているかどうかを見極めるのにも役立ちます。
適正はどうやって判断できるんですか?
業界が求めている素質が自分に備わっているかを確認するのが一つのポイントです。
たとえば、自動車業界では技術的な知識や、社会に大きな変化をもたらす仕事がしたいかなどの意欲が求められることがあります。
もしあなたが技術的な分野に興味があり、新しい技術に対する好奇心があるならば適性があるかもしれません。
ほかの業界の場合は、コミュニケーション能力やプロジェクト管理のスキルがより重要になることもあります。
自分がどのような価値観・素質を持っているか把握するきっかけにもなりそうですね。
そうですね。自分の強みや志向性が業界のニーズと一致しているかを見極めることができれば、より論理的にアピールする自己PR文の作成にも役立つでしょう。
業界研究を行うメリット
業界研究には、主に以下のようなメリットがあります。
- 隠れた優良企業の発見につながる
- 就職活動の軸ができて志望動機に深みが出る
- 面接対策になる
隠れた優良企業の発見につながる
就職活動では一般的に、知名度の高い企業が注目を集めがちです。自身や周りの人も知っている企業に応募することは安心感があるでしょう。
しかし、業界研究を通して深く知っていくうちに「業界は異なるけれど、業務内容が似ている企業がある」「この業界以外でも、自分のやりたいことが実現できる企業が存在する」といった新たな発見があるかもしれません。
将来のキャリアや満足度を高めるためには、自分の選択肢を広げてさまざまな業界を研究することが大切です。
隠れた優良企業は、その企業がどのような価値観や文化を持っているかを理解することで初めて見つかるものです。業界研究を通して新たな可能性を探してみましょう。
就職活動の軸ができて志望動機に説得力が増す
就職活動における軸ができて志望動機に説得力が増す点も、業界研究を行うメリットです。
業界の多様な側面を知ることで、「こういった働き方が理想だ」「この事業領域で社会貢献できる仕事がしたい」といったように志望動機を深掘りすることができます。
たとえば、自動車業界に興味がある場合「車に関わる仕事をしたいから自動車メーカーしか受けていない」という志望動機よりも、「車が好きで自動車整備・修理を行っている企業や車載用製品を製造している企業も受けているが、新しい自動車の研究・開発に興味があるため自動車メーカーを第一志望にしています」と述べるほうが説得力を感じるはずです。
憧れだけでなく各業界・企業をフラットに比較し関連性を探ることで、より深い志望動機を構築できるようになりますよ。
面接対策になる
エントリー先の業界を理解しておくことは、面接対策にもつながります。
「なぜこの企業を選んだのか」「なぜこの業界に進みたいのか」といった志望動機は、面接でほぼ100%聞かれる内容です。
上記のような質問をされた際、業界が抱える課題や将来の展望についての洞察を持ち、それに対する自分のスキルや経験を織り交ぜて語ることができれば説得力ある回答となります。
また、企業は面接を通して応募者とのミスマッチを避けたいと考えています。良い面だけではなく課題点も理解したうえで志望していることが伝われば、面接官に良い印象を与える要素になるでしょう。
業界研究に役立つ情報を集める6つの方法
- 就職情報サイトの特集記事やコラムを読む
- 業界構造や勢力関係などがわかる業界地図を見る
- 大学や自治体主催の業界研究セミナーに参加する
- 業界トップの企業サイトを見る
- 新聞やニュースから最新情報を収集する
- OB・OG訪問で業界の理解度を深める
就職情報サイトの特集記事やコラムを読む
就職情報サイトは、業界に関する豊富な情報が掲載されており、特集記事やコラムを読むことで有益な知識を得ることができます。
【特集・コラム例】
- 業界や職種の最新情報
- 人気のテーマから企業発見をサポート
- 自己分析ツール
- インターンシップ・仕事体験談
- OB・OGがエントリーした企業ランキング
また、エントリーシートの書き方やWEB選考で成功するためのヒントなど、就活において役立つ情報も幅広く取り揃えられているので積極的に有効活用していきましょう。
業界構造や勢力関係などがわかる業界地図を見る
業界地図は、複数の出版社から販売されている「業界構造」や「勢力関係」、「現在の動向」などをわかりやすくまとめたものです。
自身が志望する企業や業界の競合他社も業界地図上で位置づけられているので、比較分析がしやすくなります。
なお、業界地図は就活だけでなく市場リサーチや他社分析にも活用されており、企業や業界におけるポジショニングを理解するうえで有益な情報源です。
大学や自治体主催の業界研究セミナーに参加する
「業界研究セミナー」と「合同説明会」は違いますか?
よく混同されがちですが、業界研究セミナーは広い視野で業界全体を知るためのものです。
一方、合同説明会は企業が自社をアピールする場になっています。
まずは業界研究セミナーで気になる業界を見つけて、そこに属する企業の説明会へ足を運ぶという方法もおすすめですよ。
主催者 | 特徴 |
---|---|
大学主催 | ・通っている大学内で実施される ・大学に関連する地元企業の担当者が登壇するケースが多い ・大学生協主催のセミナーがある |
自治体主催 | ・都道府県または市区町村主催で行う ・地元採用に積極的な企業が登壇するケースもある |
企業主催 | ・企業が主催しており、特定の業界に興味がある人向け |
業界トップの企業サイトを見る
業界内で先頭を走る企業のサイトを調査すると、その企業がトップである理由や業界内での共通点が見えてきます。
1社だけでなく、売上トップ3やライバル企業のサイトも確認したほうが業界全体の動向やトレンドを把握しやすくなるのでおすすめです。
また、異なる業界であっても企業の理念や目標などに共通点を見つけられることがあります。今まで興味を抱いていなかった業界も選択肢に含めることができるので、さまざまな業界のトップ企業をチェックしてみましょう。
新聞やニュースから最新情報を収集する
新聞にはタイムリーな業界情報が掲載されているため、業界研究において重要な情報源となります。経済新聞などの日刊紙はもちろん、特定の業界に焦点を当てた月刊誌や専門誌も役立ちます。
新聞を手に入れる機会がない場合は、スマートフォンやパソコンからニュースサイトをチェックしたり、新聞の電子版を閲覧したりする方法が手軽でおすすめです。
単に読むだけではなく、最新の動向が業界研究でどう役立つのかを考え、メモをしながら記事を読むことでより効果的に情報を吸収できるでしょう。
新聞や業界の専門誌は大学内や地域の図書館でも閲覧可能なので、積極的に利用しましょう。
OB・OG訪問で業界の理解度を深める
WEBや新聞、書籍などでの調査だけでは把握しきれない部分もあるので、業界研究を進めるうえでOB・OG訪問もおすすめです。
先輩たちが経験した現場の様子や業界特有の雰囲気、仕事のやりがい、苦労したことなどを聞いてみましょう。
これにより、自分が想像していた業界とのギャップを理解でき、向き不向きを判断しやすくなります。良い点だけでなく課題や難しさについての率直な話を聞けるため、より客観的 かつ具体的な情報が手に入ることでしょう。
業界研究のやり方!効率よく進める手順
業界研究は、以下の手順で行うと効率よく進められます。
- 興味のある企業を選定する
- 業界研究ノートを作成する
- 範囲を広げて関連業界についても研究する
- 詳しく話を聞いてみたい業界を選ぶ
- 企業研究・インターンシップに進む
1.興味のある企業を選定する
まずは、興味のある企業をピックアップして選定した企業がどの業界に位置しているかを確認してみましょう。
その際、「メーカー」や「金融」といった大まかなまとまりではなく「自動車業界」や「証券業界」といったように業種まで考慮しておくと、より効率良く研究を進められます。
まずは興味のある企業が属する業界から始めましょう。
企業に対してある程度の知識があるため、研究を進めやすくなります。
業界の全体像をすばやく理解することが効率的な業界研究の第一歩です。
2.業界研究ノートを作成する
業界研究ノートは手書き・PCどちらで作成しても問題ありません。頭で整理しやすく自分が使いやすい形式を選ぶことが重要です。
このノートには、業界、事業内容、特徴、動向など調査項目をフォーマット化して整理しておきましょう。そうすることで、あとから見直したときに必要な情報の抽出や比較がしやすくなります。
なお、業界研究は面接やエントリーシート作成の際にも利用できるので、継続的に情報を更新し充実させていくことが大切です。
ノートにまとめる項目
業界研究ノートにまとめる主な項目
- 業界名(正式名称)
- 業界内のトップ企業(できればTOP3)
- 市場規模
- 事業・業務内容(業界内のトップ企業を参考にすればOK)
- 業界の魅力
- 業界の平均年収
- 業界の平均年齢
- 関連業界
業界研究ノートは、上記の項目を表にしてフォーマット化しておくと複数の業種・業界を比較しやすくなります。
研究を進めるなかで気付いた点や、疑問点などを追加できるように余白も作っておきましょう。
3. 範囲を広げて関連業界についても研究する
業界研究が進んできたら、新しい視点を得るために関連する業界やまだ探求していない領域にも注意を向けてみましょう。
ほかの業界を研究してみた結果、意外な場所から自分に合った仕事が見つかるかもしれません。
前述した業界研究ノートのフォーマットに従って情報を整理していきましょう。
4. 詳しく話を聞いてみたい業界を選ぶ
1~3の手順を踏んだら、「さらに深く理解したい」あるいは「実際に働いてみたい」と思う業界を絞り込んでみましょう。
ただし、この段階で無理に一つに絞り込む必要はありません。複数の業界に興味がある場合は、自分の興味が高い順に並べて優先順位をつけておく方法がおすすめです。
5.企業研究・インターンシップに参加する
業界研究が進んだら、次は企業研究に進みましょう。
興味がある企業に関する情報を集め、その企業がどのようなビジョンや価値観を持ち、どのようなビジネスモデルを展開しているかを把握します。
このステップでは企業内での働き方や社風を知り、自身のキャリアにどのようにフィットするかを考えることが重要です。
インターンシップに参加するなどして企業の内部に触れてみるのも良いでしょう。理想的な働き方や業務内容について、より明確なイメージを得ることができるはずです。
企業研究が思うように進まないときは、一度業界研究に戻って業界を把握するための作業をしてみましょう。
業界研究を行う際に押さえるべきポイント
業界の数は膨大で、深く理解しようとすると非常に時間がかかってしまいます。効率的な研究を進めるためには以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 業界の全体像を把握する
- 業界のビジネスモデルを理解する
- 業界の動向・成長性を知る
業界の全体像を把握する
ビジネスの世界は多岐にわたり、さまざまな企業が異なるビジネスモデルや分野で活動しています。
この多様性のなかで企業のビジョンや戦略を理解し、今後の成長性を考えるためにはまず大まかな分類である業界の全体像を把握することが不可欠です。
業界から企業へと視点を移していくことで、企業の位置づけや将来性をより深く理解し、就活においてもより有益な判断が可能となります。
業界のビジネスモデルを理解する
業界研究において、どのようなビジネスモデルで成り立っているかを理解することも極めて重要です。
たとえば、BtoBサービス(企業にサービスを提供)、BtoCサービス(個人にサービスを提供)のように顧客の分類を把握することは、業界の特徴を理解するうえで欠かせません。
業界のビジネスモデルがわかれば、企業がどのように経済的な成果を上げているのか、市場でどのような立ち位置にあるのかを把握しやすくなります。
これは、志望する企業や業界を選ぶ際に重要な情報となります。
業界の動向・成長性を知る
業界の動向や成長性を把握しておくことは、将来のキャリア形成において大切なポイントです。
その業界が今後どのように変化し発展していくかを分析できれば、自身のキャリアプランをより具体的に考える手助けとなります。
たとえば、成長性が高い業界では新たな機会や仕事が生まれやすく、個々の職種においても成長の余地が大きいといえるでしょう。
業界動向を多角的に捉えて成長性を測っている参考書などもあるので、活用してみるのもおすすめです。
業界研究を進める際の注意点は3つ
業界研究を進めるときは、以下の点に注意しましょう。
- 業界研究の目的を見失わないこと
- 研究に時間をかけすぎないこと
- インプットした情報は必ずアウトプットすること
業界研究の目的を見失わないこと
業界研究の目的は、自身が就職したい企業を見つけることと、適性を判断することにあります。情報の収集だけが目的になってしまわないように注意しましょう。
業界のことについては、入社してからのほうがより深く学べます。
企業は知識の広さや深さを求めているのではなく、自社の概念や業務にマッチしている人材か見極めているということを覚えておきましょう。
企業が注目するのは、「自分の会社でどれだけ活躍してくれそうか」「仕事内容を正しく理解し、適性を持って応募しているか」といった点です。
得た知識の深さを披露してほしいわけではないので、目的がズレてしまわないよう気を付けましょう。
研究に時間をかけすぎないこと
業界研究の内容は、企業研究やインターンシップの準備、会社説明会、エントリー企業の選定など、就職活動において重要な判断材料となります。
しかし、就職活動の第一段階ともいえる業界研究に時間をかけすぎてしまうと、次のステップへの初動が遅くなってしまうので注意してください。
興味を持った業界のビジネスモデルや働き方に関する基本的なイメージをつかむことができれば十分と考え、あとの知識は就職活動を進めながら身に着けていく意識で研究に臨みましょう。
最終面接に近づいていくと、志望度の高さを問うために企業知識も含めたさまざまな切り口から志望動機を聞かれることがあります。
選考フェーズによって求められる知識内容が変わるため、完璧を追い求めるよりは都度深堀りしてくことを意識すると良いでしょう。
たしかに、最終面接では一次面接よりも深い洞察が求められそうですね。
最初から完璧に情報をインプットしておかなくては!と身構えていました。
その気持ちもよくわかりますが、業界研究はあくまで自分の適性や志望度を高めるための手段です。
基本的な目的も見失わないように気をつけましょう。
インプットした情報は必ずアウトプットすること
業界研究自体は就職活動における典型的な「インプット」の取り組みです。ただし、この取り組みが評価されるかどうかは、どれだけアウトプットできるかが鍵となります。
具体的なアウトプットの方法として、研究内容を反映させたエントリーシートを作成し、キャリアセンターの担当者などに 添削してもらうことが挙げられます。
このプロセスで自分の理解が深まると同時に、他者に伝える力も向上します。
実際に企業へエントリーシートを送って、通過の有無を確かめることも立派なアウトプットです。自分の研究がどれだけ実践的で役立つものなのかを確かめられるでしょう。
OB訪問で自分の意見や考えを伝えることも有効的なアウトプットといえます。
業界研究で得た知識の正誤判断ができるうえ、頼れる第三者からアドバイスをもらうことで前向きに取り組みやすくなると思います。
情報をただ収集するだけでなく、具体的な行動に結びつけることが成功への近道です。
まとめ
業界研究は単なる知識の蓄積だけでなく、将来のキャリアや就職活動において戦略的な洞察を得るための重要なプロセスです。十分な調査と分析を行い業界の構造やトレンドを理解しましょう。
また、自己分析と同時進行することで自分の適性や志向性を考慮しながら将来の進むべき道を明確にすることができます。
業界研究で得た知識は選考や面接において自信を持ってアピールする材料となり、より有益なキャリア構築に繋がることでしょう。