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Aさん
就職活動中の学生。履歴書の正しい書き方や、就活に効果的な書き方を知りたいと考えている。
神奈川トヨタ自動車 リクルート室 室長
神奈川トヨタ自動車の採用担当。 数多くの面接を担当するほか、会社説明会・入社後研修など様々な採用シーンで活躍。 就活生の気持ちに寄り添いながらも、採用者目線でアドバイスします。
履歴書では、なぜ得意科目を書かなければならないのでしょうか?
企業は採用を決める前に、就活生について少しでも多くの情報を知りたいと考えています。
知識やスキルといった、能力を把握したいということでしょうか。
その通りです。
また、得意科目からその人の人柄や長所も見ています。
「人柄」ですか?
どのように優秀な人材であっても、得手不得手が存在します。
企業は、その人が希望する業種に適しているか、採用後に自社内で活躍してくれるかといった点をチェックしているのです。
得意科目を知りたいというよりも、得意科目を通して就活生の能力や人柄を見ているのですね。
その通りです。「得意科目」の重要性や書き方のポイントについて、詳しく解説しましょう。
企業が履歴書の得意科目に注目する理由は?
履歴書の得意科目は、企業に自身の魅力をアピールするチャンスです。
何を書くのか決める前に、まずは企業がどのような点に注目しているのかを理解しておきましょう。
履歴書の得意科目が重視される理由について解説します。
・就活生のスキルや長所を知るため
・希望する職種や社風との相性をチェックするため
・面接での会話のきっかけにするため
就活生のスキルや長所を知るため
学歴だけでは、就活生の能力や長所までは伝わらないものです。
そこで企業が注目するのが、「得意科目」や「自己PR」、「ガクチカ」といった項目です。
得意科目から勉強スタイルや考え方といった情報を得ることで、就活生を多面的に評価したいと考えているのです。
実際の業務で国語や数学の問題を解くことはありませんが、国語を得意とする場合は、洞察力や表現力に優れていると判断できます。
また、数学を得意とする場合は、論理的に物事を考えられると判断できるでしょう。
このように、得意科目から多くの情報を得られるため、企業は学歴以外の部分にも注目しているのです。
希望する職種や社風との相性をチェックするため
その人がどんなに優れた能力を持っていても、希望する職種や社風に合っていなければ意味がありません。
企業は、履歴書の得意科目を通して「入社後に自社で活躍してくれる人材であるか否か」を知りたいと考えています。
得意科目と希望する職種に関連性があれば、入社後に活躍が期待できます。
もちろん、入社後に知識を深めたり、様々な経験を通してスキルを磨いたりすることもできますが、専門性の高い職種であれば、入社時点である程度の適正が求められるでしょう。
入社を希望する就活生が多ければ、当然、その企業に適していると判断できる人材が優先的に採用されます。
企業は、得意科目を通して、就活生の能力や人柄と「自社との相性」にも注目しているのです。
面接での会話のきっかけにするため
企業は、就活生について正しく判断するために、素の姿を知りたいと考えています。
面接など堅くなりがちな場面で就活生の素の姿を見るためには、空気を和やかにし、積極的に発言しやすい空気にするために、本題に入る前に「アイスブレイク」とよばれる簡単な会話がおこなわれることがあります。
得意とする分野に関する話題は答えやすいことから、アイスブレイクの際に履歴書の得意科目について質問される ことがあるのです。
話題を振られたときには話題を広げられるように、あらかじめ得意科目に関するエピソードを準備しておくと良いでしょう。
得意科目をどのように勉強していたのか、得意科目の研究内容など、なぜ得意なのかが分かる具体的なエピソードを簡潔に伝えることが大切です。
履歴書に得意科目を書く3つのポイント
得意科目について、実際にどのような書き方をすれば良いのかわからないという方もいるでしょう。
履歴書に得意科目を書く際に意識したい3つのポイントをご紹介します。
①結論から書く
②簡潔にまとめる
③希望する業務に結びつける
①結論から書く
前置きが長くなってしまうと、それだけで読み手にとって伝わりにくい内容となってしまいます。
履歴書の得意科目を書く際には、「私の得意科目は◯◯です」といった形で結論から述べましょう。
結論から書くことで、読み手に伝わりやすくなる上に、何を伝えたいのかが印象に残りやすくなります。
結論ファーストで読み手にインパクトを与えた後に、得意とする理由や具体的なエピソードを書くと良いでしょう。
理由付けを行うことで、企業にとって必要な人材であるということをアピールしましょう。
②簡潔にまとめる
専門性が高い得意科目は立派な武器となりますが、読み手にとってわかりにくくなってしまう可能性があります。
専門性が高い内容を記載する場合は、誰が読んでも理解できる内容でわかりやすく簡潔にまとめることが大切です。
また、自己アピールをしたいからと付随するエピソードや根拠を詰め込んでしまうと、伝えたい印象が薄まってしまうことも考えられます。
効果的にアピールするためにも、伝えたいことだけをピックアップして簡潔にまとめてください。
③希望する業務に結びつける
得意とする科目をアピールしても、実際の業務で役に立たないのでは効果的ではありません。
得意科目を書く際には、「実際の業務に結びつけること」を意識しましょう。
数学を得意とする場合、経理の仕事を目指しているのなら「計算が得意です」というアピールで構いませんが、営業職を目指しているのなら別の内容の方が効果的です。
例えば、営業職に結びつけたい場合は、「論理的思考で戦略的なアプローチが得意です」という形でアピールすると良いでしょう。
単に自身の得意科目を披露するのではなく、企業に必要だと思ってもらえるように書くことを心がけましょう。
同じ得意科目であっても、書き方によって読み手が受ける印象は異なります。
自身の得意科目が企業でどのように役立つのか考えながら、表現の方法を工夫することが大切です。
得意科目が思いつかない場合の対処方法
自身の魅力をアピールする方法として有効ですが、そもそも得意な科目が何かわからないという方もいるでしょう。
思いつかない場合の対処方法について解説します。
・好きな科目を選択する
・第三者に尋ねてみる
・アピールしたい強みから考える
好きな科目を選択する
得意科目は、誰よりも優れている必要はありません。
企業は素晴らしい才能を求めているわけではなく、得意科目を通して就活生の考え方や人柄を知りたいのです。
得意科目が思いつかない場合には、純粋に「好きな科目」を選択しましょう。
企業にとって必要なのは、結果ではなく「なぜその科目が好きなのか」、「どのように勉強に励んだのか」といった過程です。
優秀な成績を残していないとしても、好きな科目・興味のある科目であれば、上記の過程を説明できるはずです。
結果の善し悪しにかかわらず立派なアピールポイントとなるので、自身の好きな科目を振り返ってみましょう。
第三者に尋ねてみる
自力で得意科目を見つけることが難しい場合は、家族や友人などの第三者に尋ねてみると良いでしょう。
家族や友人といった身近な存在であれば、自分以上に理解してくれている可能性があります。
自分では気付けなかった才能や魅力を教えてもらえることがあるので、考えに行き詰まったら相談してみると良いでしょう。
無自覚に「できて当たり前」だと思っていたことが、実は強みである可能性もあります。
客観的な意見を参考に、得意科目を探してみてください。
アピールしたい強みから考える
希望する業種が決まっている場合は、アピールしたい強みから逆算するというのも一つの手です。
得意な科目がたくさんあって選べないという方は、目指す業種に最も適していると思える科目を選びましょう。
例えば、営業職を目指していて、コミュニケーション能力をアピールしたいという方の場合、チームプレーに自信があるなら「体育」、相手の考えや気持ちを理解するのが得意なら「国語」や「心理学」などの教科からアピールすることができます。
このように、得意科目が多い方は、「何を目指していて」、「どんなことをアピールしたいのか」を考えて選ぶと良いでしょう。
履歴書の得意科目を書く際の注意点
基本的に得意科目は自由に記入することができますが、NGとなる書き方も存在します。
実際に記入する前に、書き方の注意点を把握しておきましょう。
・「なし」や「特にありません」は絶対にNG
・複数の科目を記載するのはNG
・実際の業務に結びつかない科目はNG
「なし」や「特にありません」は絶対にNG
得意科目の内容は自由に書くことがきますが、空欄だけは絶対に避けましょう。
「なし」や「特にありません」といった文言を書いてしまうと、企業から「やる気がない」、「誠意がない」というネガティブな印象を持たれてしまいます。
学生時代に何も努力をしていないと思われてしまう か、履歴書を埋められないことで志望度が低いと捉えられてしまうため、自信がなくとも得意だと思える科目を一つ記入しておきましょう。
志望する業種や企業と関連のある科目を取り上げて、入社する意欲があることをアピールしてください。
どうしても見つからないという方は、ゼミでの履修内容や、自身の所属する学部や学科に関連する科目を選択すると良いでしょう。
複数の科目を記載するのはNG
自身の魅力を沢山伝えたいからといって、複数の科目を記載するのは避けましょう。
「私が得意な科目は、国語と数学と体育です」という書き方をすると、それぞれの科目でアピールポイントが異なり、何を伝えたいのかがわかりにくくなってしまいます。
また、複数の科目を取り上げることで、科目一つあたりのアピールが弱くなってしまう可能性もあります。
得意な科目をたくさん紹介するのではなく、何か一つ自信のある科目を選んで集中的にアピールを行いましょう。
得意だといえる根拠や関連するエピソードを書いて、読み手の印象に残るように深堀りすることが大切です。
実際の業務に結びつかない科目はNG
企業は、得意科目を通して就活生が希望する業務や社風に合っているか、相性をチェックしています。
得意科目で自身の魅力を伝えることは大切ですが、企業に合っていないのではアピールとして弱いといえます。
履歴書に得意科目を書く際には、実際の業務に役立つという点をアピールすることが大切です。
営業職を目指す場合、体育が得意で「走るのが速い」という点をアピールしてもプラスになりにくいでしょう。
体育が得意ということを通して、「チームプレーが得意」、「粘り強く挑戦できる」といった具合に業種に適した表現が必要です。
自身の得意とする科目が実際の業務にどう役立つのか、しっかりとアピールを行いましょう。
実際の業務がわからないという方は、企業研究を参考にすると良いでしょう。
企業の特質や事業内容がわかるので、得意科目を選択する際に役立ちます。
履歴書の得意科目の書き方【例文5選】
自身の得意な科目はわかるものの、どのように表現すれば良いのかわからないという方もいるはずです。
具体的なイメージが湧かないという方に向けて、得意科目を書く上で参考にしたい例文を5つご紹介します。
①英語
私の得意科目は英語です。
大学では4年間英語を履修しているほか、1年間カナダへ留学しました。
他国の留学生と交流したり、ホームステイを体験したりと、実際に海外で生活を送ったことで日常会話には全く困らない英語力が身につきました。
帰国後にはさらに英語力を伸ばすために、英会話教室でビジネス英語を学んでいます。
留学で培った海外での経験と英語力を強みに、国内外の取引先と積極的に良い関係を築き、貴社に貢献したいと考えています。
②数学
私の得意科目は数学です。
数学の問題には、一つの答えに対して複数の解き方があります。
私は物事を多角的に捉えて、最も効率の良い解決方法を見つけることが得意です。
難しい問題においてはできることから一つずつ取り組み、根気強く解決方法を導き出すことを得意としています。
入社後にも自身の論理的な考え方や問題解決能力を活かして、貴社に貢献したいと考えています。
③国語
私の得意科目は国語です。
幼少期から本を読むことが好きで、大学では日本文学を専攻していました。
文学を学ぶことで身についたのは、他者の視点に立って物事を多面的に捉える力です。
文脈から登場人物の考えを考察することで他者の考えや気持ちを理解し、さらに自身の内面についても言葉に出して表現することが得意になりました。
貴社でもお客様の気持ちを汲み取って寄り添い、質の高いサービスを提供したいと考えています。
④プログラミング
私の得意科目はプログラミングです。
HTMLやJavaScript、Pythonなどのプログラミング言語を一通り習得しています。
大学在学中には、SEOを意識して運営した自身のブログが検索順位で上位に表示されたり、サイト制作を請け負うアルバイトを行ったりしました。
実践的に学んだ経験を活かし、プログラマーとして貴社に貢献したいと考えています。
入社後にも学ぶ姿勢を持ち続けながら、必要に応じてプログラミング言語の学習を続けたいと思います。
⑤心理学
私の得意科目は心理学です。
幼い頃から人と話すことが好きで、大学では行動心理学を専攻しています。
目には見えない心の内を知るために、無意識に行う仕草から相手の考えや気持ちを量る方法について学びました。
心理学の授業や研究から、意識的にも無意識的にも人の行動には必ず意味があることを知り、ますます人とのコミュニケーションが楽しいと感じられるようになりました。
入社後には、心理学で学んだ知識やスキルを活かして、営業活動や広報活動で貴社に貢献したいと考えています。
まとめ
自身のことを知らない企業に対し、能力や人柄を伝えることは簡単ではありません。
しかし、履歴書を通して自身の魅力を伝えることができます。
得意科目をはじめとした履歴書の書き方がわからない、苦手意識を持っているという方は、企業に自己アピールできると前向きに捉えて、チャンスを最大限に活かしましょう。
希望する業種があるという方は、得意科目を通して、自身が企業にとって必要な人材であることをアピールしてください。