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Aさん
就職活動中の学生。ガクチカの役割や、就活に効果的な書き方について知りたいと考えている。
神奈川トヨタ自動車 リクルート室 室長
神奈川トヨタ自動車の採用担当。 数多くの面接を担当するほか、会社説明会・入社後研修など様々な採用シーンで活躍。 就活生の気持ちに寄り添いながらも、採用者目線でアドバイスします。
就活の頻出質問として「自己PR」や「ガクチカ」が有名ですが、どちらも同じもののような気がします。
一般的に「自己PR」は自身のスキルや強みをアピールするのに対し、「ガクチカ」は一つの物事を達成するために頑張った経験や過程を伝える項目だと考えられています。
うーん。どちらも似ていると思います。
自己PRは自身の能力で「何を達成できたのか」、ガクチカは自身の能力で「どのように達成できたのか」をアピールすると良いでしょう。
自己PRは「結果」、ガクチカは「過程」が重視されるということでしょうか?
その通りです。
実際にガクチカを書く前に、まずは見つけ方や書き方、注意点や例文をみて基礎知識を身につけておきましょう。
ガクチカがない人はいない!
ES(エントリーシート)でガクチカを記入する欄があるけれど、何を書けば良いのか思いつかないという方もいるでしょう。
そもそも「自分にはガクチカがない」と考えている方もいますが、ご自身の取り組んできたことを洗い出せば、必ず見つかります。
まずはガクチカとは何なのか、自分にはガクチカがないと思ってしまう理由について解説します。
ガクチカとは?
学生時代に力を入れて取り組んだことを「ガクチカ」といいます。
アルバイトや資格取得など、過去に頑張った経験を記しても良いですが、現在継続していることを記しても構いません。
ガクチカが原因で不採用になるということはまずありませんが、企業に自身の魅力を知ってもらえるアピールポイントとなるので、いい加減な気持ちで記すことは避けましょう。
具体的なエピソードを交えて、学歴以外の自身の魅力を企業に伝えてください。
ガクチカがないと思ってしまう理由
就活では「ガクチカがない」と考えている人も多くいます。
ガクチカは自身の努力を示すための項目であり、立派な成果や実績を示す必要はありません。
また、学業や部活動など大学内での取り組みがあれば最適ですが、必ずしも大学の中の取り組みでなければならないというわけではなく、大学の外で力を入れてきた取り組みも含まれます。
「大学時代はアルバイトに没頭していた」という方は、アルバイトがガクチカとなり、「サークルや部活には所属せず、趣味として沢山の本を読んだ」という方は、読書がガクチカだといえるでしょう。
このように、誰にでも学生時代に力を入れたことは存在するはずです。
初めから「ない」と決めつけるのではなく、自身の経験から企業にアピールできるポイントを探してみましょう。
ガクチカで企業がチェックするポイント
企業は、ガクチカを通して何を判断しているのでしょうか。企業が就活生の回答の中で注目している具体的なポイントをご紹介します。
①性格や人柄
②物事への取り組み方
③わかりやすく説明する力
④自社との相性
①性格や人柄
スキルや能力以外の「性格や人柄」も業務に影響するため、採用担当者はガクチカから就活生自身について知りたいと考えています。
ガクチカのエピソードからどのようなことに興味・関心を抱くのか、何に対してモチベーションを持っているのかをチェックすることで、業務に適しているか、長く自社に勤めてくれる人物であるか否かを判断しているのです。
②物事への取り組み方
企業が就 活生を知る上で「物事への取り組み方」も重視されます。
物事への取り組み方にも個性が現れるため、目標の設定方法や課題の解決方法を通して、就活生が仕事に対してどのような姿勢で臨むのかチェックしています。
物事の考え方や主体性の有無を 知ることで、自社にどのような形で貢献してくれるのか見極めているのです。
③わかりやすく説明する力
自身の経験やエピソードを「わかりやすく説明できるか」といった点も、ガクチカでの評価ポイントとなります。
仕事の内容にかかわらず、社会に出れば自社内でも顧客に対しても、物事をわかりやすく伝える力が求められます。
そのため、ガクチカを通して、簡潔かつ論理的に説明する情報伝達能力があるかチェックしているのです。
初対面の方でも理解しやすいように、話しの内容や伝え方を工夫しましょう。
④自社との相性
企業はガクチカを通して、「就活生と自社との相性」も判断しています。
就活生の性格や人柄、物事への取り組み方を知ることで、実際の業務に適しているかチェックしているのです。
また、自社の企業理念や求める人物像とマッチしているかといった点もチェックしています。
自身が伝えたいことを取り上げることも大切ですが、企業のニーズに合っているか をよく考えながらガクチカで紹介するエピソードを選びましょう。
ガクチカの見つけ方・探し方
就活の中でガクチカが重要であることはわかりましたが、そもそも何を書けば良いのかわからないという方も少なくありません。
ガクチカを見つけたり、探したりしたい場合は、どのような方法を取れば良いのでしょうか。詳しく解説します。
今までの経験を振り返る
ガクチカがないと思っている方は、まずは自身の過去を振り返ってみましょう。
今までの経験の中に、アピールポイントとなるエピソードが隠れていることもあります。
学生時代の行いの中から、楽しかったことや苦しかったこと、夢中になったことや達成感を味わえたことを思い出してみてください。
「どのような実績を残したのか」ではなく、「どのような経験を積んできたのか」思い出すことが大切です。
立派な実績を残していなくとも自己成長につながるようなエピソードがあれば、ガクチカとしてまとめると良いでしょう。
自己分析を行う
ガクチカが思いつかないときには、自己分析を行って自身の価値観やモチベーションの源を発見することも大切です。
自身のことをよくわかっていない状態で過去の経験を振り返ると、本来なら立派なアピールポイントとなるエピソードであっても「大したことはない」、「頑張った覚えはない」と見落としてしまいがちです。
自己分析を行って自身を見つめ直し、改めて長所を洗い出してみましょう。
趣味や特技があれば、自身の価値観やモチベーションの源としてガクチカで紹介してください。
第三者に聞いてみる
自己分析を行ってもガクチカが思いつかない、過去を振り返ってみてもガクチカが見つからないという方は、家族や友人に聞いてみましょう。
自分では気付くことが難しい長所を教えてもらえる可能性があります。
「3年間、毎朝ランニングをしている」、「授業を一度も遅刻したり欠席したりしたことがない」など、自身にとっては当たり前のことであっても、周囲の人からみれば十分に長所だといえるエピソードも存在します。
様々な角度から自身を見つめ直した方がガクチカを見つけやすいので、家族や友人、同僚など、周囲の評価にも耳を傾けてみてください。
ガクチカや自己PRなど、就活では自己を「客観視」することが大切です。
考えが浮かばない、上手くまとまらないというときには、周囲の方に相談しましょう。
ガクチカを書く際の注意点
自己PRや得意科目と同じように、ガクチカにもNGとなる書き方が存在します。
正しい書き方を知っておくことも大切ですが、間違いがないように誤った書き方についても把握しておきましょう。
ガクチカを書く際の注意点をいくつかご紹介します。
嘘や大げさ過ぎる表現はNG
当たり前のことですが、ガクチカを書く際には嘘をついたり、大げさ過ぎる表現で話を盛り過ぎたりすることは避けましょう。
ES(エントリーシート)の時点では問題はなくとも、面接で嘘が発覚した場合、誠実ではない人という印象を与えてしまうでしょう。
また、大げさ過ぎるアピールでは採用担当者に響きにくいだけでなく、謙虚さがないと判断されてしまうと、結果的に良い評価に繋がりにくいでしょう。
ガクチカでは、立派な実績や経歴を語る必要はないので、正直に等身大の自身の魅力を伝えてください。
自己PRと同じ内容はNG
ガクチカと似ているといわれるのが、「自己PR」です。
ガクチカも自己PRも面接ではよく質問される項目であるため、具体的なエピソードを聞かれる可能性があります。
深堀りされても困らないように、しっかりと準備し、内容が被らないよう注意しましょう。
同じエピソードを取り上げてしまうと、準備不足と判断されたり、他にアピールできるポイントがないと評価されてしまう恐れがあります。
ガクチカと自己PRでは、それぞれ異なるエピソードを取り上げてください。
違う内容を考えるのが難しいという方は、「自己PR」は自身の長所や人柄に関するエピソード、「ガクチカ」は学生時代に取り組んできたことのエピソードとして考えてみてください。
ネガティブな表現はNG
自身の魅力をアピールする面接の場面では、ネガティブな表現を多用することは効果的ではありません。
「責任のある仕事を任された」という表現は問題ありませんが、「同期にはできなかった仕事を自分にだけ任された」といった他者を貶めるような表現は、採用担当者に悪い印象を与えてしまいます。
また、「大会参加者○○名の中で1位だった」といった全体の中での位置付けや数字などで根拠が示されている内容は問題ありませんが、「ライバルの○○さんよりも順位が高かった」といった特定の人物を引き合いに出して位置付けすることは避けましょう。
ネガティブな表現を使う場合は、ポジティブに言い換えたり、他の言い回しを考えたりしてみると良いでしょう。
意図せず問題のある表現を使用してしまうこともあるので、ガクチカが完成したら一度周囲の人にチェックしてもらうこともおすすめです。
ガクチカが見つからない場合の対処方法
自身の学生時代を振り返ったり、第三者に尋ねたりしても見つからない場合は、新たなエピソードを作るというのも一つの手です。
ガクチカがどうしても見つからないという方に向けて、対処方法をいくつかご紹介します。
・資格を取得する
・インターンシップに参加する
・アルバイトを始める
・大学以外の課外活動に取り組む
・趣味や特技を見つける
資格を取得する
ガクチカが見つからない場合は、資格の取得に挑戦するのもおすすめです。
合格することも大切ですが、資格取得までの過程そのものがガクチカとなります。
どのような計画性をもって勉強に取り組んだのか、効率的に勉強を行うためにどのような工夫を凝らしたのか、受験までに行った努力を具体的に伝えて企業にアピールしましょう。
将来的に目指している職種で役立つような資格を取得しておくことが理想です。
インターンシップに参加する
就職を希望している業界が決まっている場合は、インターンシップに参加しましょう。
インターンシップでのエピソードがガクチカにつながるというだけでなく、実務経験は就職後にも役立ちます。
インターンシップには短期と長期の2種類存在しますが、時間に余裕があるのなら長期インターンシップへの参加がおすすめです。
短期と比較すると実際の業務に携わる時間が長く、より多くの経験を積むことができます。
ガクチカを作るだけでなく業界研究や企業研究も同時に行えるので、やりたいことが見つからないという方は、ぜひインターンシップへ参加してください。
アルバイトを始める
ガクチカが見つからない場合は、アルバイトに挑戦することも1つの方法です。
その場合、ただ単にやってみたいことや条件面 で決めるのではなく、ガクチカに繋がりそうなアルバイト先を探すようにしましょう。
ガクチカに使えるアルバイトを探す場合、自身の得意分野が活かせるアルバイトを選ぶことも大切ですが、希望する職種があるのなら就職後に役立つようなスキルを磨けるアルバイト先が理想です。
例えば、営業職を希望する場合は、接客業を選択すると良いでしょう。
接客業であれば、コミュニケーション能力が培われるほか、チームワークの重要性についても学べます 。
そして、アルバイト先では、単 に与えられた仕事をこなすのではなく、目標を持って取り組むと、説得力をもってガクチカでアピールできます。
大学以外の課外活動に取り組む
大学の中だけでなく、課外活動で行ったこともガクチカになります。
課外活動に参加するのであれば、サークルやゼミとは異なる、幅広い年代の方が集まる活動を選択すると良いでしょう。
価値観や考え方が異なる人と多く触れ合うことで、自己成長を目指せます。
課外活動の中でも比較的ハードルが低いのが、ボランティアです。
一つの目標に向かって大勢と協力し合うことで、協調性の大切さを学べるでしょう。
自身がボランティアの中でどのような活動を行ったのか、具体的なエピソードを取り上げてガクチカでアピールしてください。
趣味や特技を見つける
趣味や特技もまた、立派なガクチカとなります。
音楽が好きな方は、好きな曲目を弾けるように楽器を習ってみるなど、具体的な行動に繋がっているとアピールしやすいでしょう。
絵を描くことが得意だという方は、コンクールに応募して入賞することを目指すなど、目標を持って取り組むのも効果的です。
取り組みはコンクールなど評価が伴うものでなくても、「1年間で100冊の本を読む」「映画を1年間で50本見る」などでも構いません。
その場合、読んだ感想を日記に記したり、スマホのメモにまとめたりしておくと、よりガクチカとして取り上げやすいでしょう。
単に「音楽が好き」、「絵が得意」だけではアピールとしては弱いため、常に目的意識を持って計画的に取り組んでいたとアピールすることが大切です。
実際に目標を達成できなかったとしても努力した過程はガクチカとなるので、自身の好きなことや得意なことに情熱を注いでみましょう。
ガクチカのために新しいことに挑戦するなら、熱意を持って取り組めるものを選択しましょう。
自身の好きなことや興味があることを選択すると、よりガクチカでアピールするエピソードを作りやすくなります。
ガクチカの書き方【例文5選】
ガクチカを書く際には、以下の流れを意識することが大切です。
①結論(何に取り組んだのか)
②動機(取り組んだ理由)
③行動(どのように取り組んだのか)
④結果(取り組むことで得られた結果)
⑤目標(入社後に貢献できること)
自己PRにもいえることですが、まずは採用担当者に興味を持ってもらえるように「結論」から書くことが大切です。
次になぜ興味を持ったのか、どのように取り組んだのか、内容を記載してください。
単に行ったことを羅列するのでなく、具体的なエピソードを入れると良いでしょう。
また、取り組みに対して頑張ったとアピールするだけでなく、良い方向に変わった「結果」を記しておくことも大切です。
最後に、取り組んできたことが業務にどのように活かせるのか、企業にどのように貢献できるのか、「採用したい」と思ってもらえるように今後の目標でまとめます。
流れはわかったものの、ガクチカをどのように書けば良いのか具体的なイメージが湧かないという方は、下記の例文も参考にしてください。
①資格
将来的に海外で活躍することを目指して、学生時代にはTOEICに取り組んでいました。
TOEICで高得点を目指すために、日々リスニングやリーディングの問題集に取り組み、力がついてきたところで模擬試験にも積極的に挑戦しました。
一度目は目標点数に届きませんでしたが、得られた結果から自身の弱点を洗い出し、本番までに対策方法を考えて弱点の克服に努めました。
二度目の模擬試験では目標とする点数に到達できたことで、自身が苦手とすることでも地道に努力を重ねれば目標を達成できると学びました。
御社への入社後にも、学ぶ姿勢を忘れずに、自身の粘り強さと忍耐強さで様々な業務に挑戦したいと考えております。
②長期インターンシップ
IT業界に興味があったため、大学の夏休みにIT企業での長期インターンシップに参加しました。
私がインターンシップに参加すると決めたのは、授業では学べない実際の業務で役立つ知識やスキル、ビジネスマナーを学びたかったからです。
インターンシップでは、企業が運営するブログサイトの集客業務を担当しました。
コラム記事の制作業務に携わっていたのですが、最初は思ったようにアクセス数が伸びずに苦戦しました。
しかし、記事を見直して不足していた情報を追加したり、経験のある社員にアドバイスをもらい、より伝わりやすい構成に書き換えたりすることで、徐々にアクセス数を伸ばすことができました。
インターンシップでは、問題が起こった際にも冷静に分析を行うことの大切さと、客観的な意見をもらうことで新しい発見ができることを学びました。
入社した後にも、自身の論理的に物事を考えられる力や、地道に努力を重ねる忍耐強さを活かして、貴社に貢献したいと考えております。
③アルバイト
私は、学生時代にアパレルショップで販売員のアルバイトをしてきました。
アパレルショップでの販売員を選んだ理由は、自身のコミュニケーション能力を活かせると考えたからです。
幅広い年代のお客様と接する機会に恵まれたことで、お客様一人ひとりに寄り添った接客を行うことができるようになりました。
また、先輩からのアドバイスを基に自分らしい接客方法を見つけたり、後輩が困っているときには一緒に接客をしたり、互いに協力し合うことで円滑に店舗運営ができるというチームワークの大切さも学びました。
入社した後にも、自身のコミュニケーション能力や接客スキルを存分に活かして、御社に貢献したいと考えております。
④課外活動
私が学生時代に力を入れたことは、地域の清掃や炊き出しといったボランティアサークルでの活動です。
私がボランティアに興味を持ったきっかけは、自己成長を目指すと同時に、社会に貢献したいと考えたからです。
清掃活動では、仲間たちと協力し合ってゴミを回収したり、草むしりを行ったりすることで、チームワークの大切さを学びました。
炊き出しでは、少人数で大量の食品の仕分けや配達を行ったことで、一つの物事を達成するためには計画性が重要であることを学びました。
現在も地域のボランティア活動に参加しながら、地域の美化やフードロス問題の解消を目指しています。
ボランティア活動に参加して得られたのは、社会の一員としての自覚や責任感です。
御社に入社した後にも助け合いの精神を大切に、チームに貢献したいと考えております。
⑤趣味・特技
私は学生時代、趣味の読書に力を入れていました。
幼い頃、両親から絵本を読んでもらったことをきっかけに読書が好きになり、大学では年間100冊の読書を目標に、勉強の合間に様々なジャンルの本を読んでいました。
文学や歴史、ビジネスや自己啓発といった様々な分野の本から得られたのは、幅広い知識と視野の広い考え方です。
読書を通して多種多様な人間性や価値観があることを知り、自身では体験しきれないようなことを学べるほか、自身とは異なる考え方から多くのことを気付くことができました。
また、本を読んできたお陰で洞察力が養われ、物事を論理的に考えることもできるようになりました。
今後も積極的に読書を続けながら自己成長を目指し、培った知見を業務で活かしたいと考えております。
まとめ
長い学生生活の中には、力を入れたことがいくつか存在するはずです。
自身では大したことないと思っていても、実は立派なアピールポイントとなることもあります。
ガクチカが思いつかないという方は、今一度学生時代を振り返ってみてください。
アルバイトやインターン、取得した資格や参加した課外活動を思い出して、企業にアピールできるポイントを探しましょう。
企業に「採用したい」と思ってもらえるように、ガクチカを通して学歴だけでは判断できない自身の魅力を伝えてください。