2025.08.29
【社員を守る】ドライバーの熱中症対策が必要な理由と、すぐできる対策

暑さが本格化する季節はもちろん、昨今は9月~10月まで真夏日が続くこともあります。
外回りや運転業務を担う社員にとって、猛暑は大きな負担になります。
特に、日中の営業車運転や配送業務、渋滞中の長時間滞在など、炎天下にさらされやすい業務形態では「熱中症」が深刻な健康リスクとなります。
近年は35℃を超える猛暑日が全国各地で続くようになり、車内温度が50℃を超えるケースも珍しくありません。
今回は、企業が取り組むべき「ドライバーの熱中症対策」について、具体的なリスクと実践的な対応策をご紹介します。
ドライバーの熱中症対策が必要な理由
ドライバーが熱中症になると、本人の体調不良にとどまらず、企業にとっても多大なリスクを伴います。
以下のような影響を回避するためにもドライバーの熱中症対策が不可欠です。
1.熱中症による事故リスク
最も重大な影響は、ドライバー自身の体調不良はもちろん、熱中症が原因で引き起こされる交通事故です。
熱中症の初期症状の1つでもある「倦怠感」や「頭がボーっとする」「めまいや顔のほてり」などの状態での運転は、正確な判断ができなくなるほか、ブレーキやハンドル操作の遅れを招き、他者を巻き込む重大事故の原因になります。
2.業務停止や遅延による損失
体調不良で運転を中断せざるを得なくなった場合、納品・訪問・作業などが予定通りに進まないなどの業務が滞ることも考えられます。
納期遅延は、経済的な損失があるだけでなく、取引先からの信頼を失うことにもつながりかねません。
3.労災・訴訟・保険対応の負担
熱中症による救急搬送や入院があった場合は労働災害と認定される可能性もあります。
場合によっては企業に安全配慮義務違反が問われるケースもあり、訴訟リスクや保険対応による間接的コストも無視できません。
社用車ドライバーはなぜ熱中症になりやすい?
ドライバーは、業務の性質上熱中症の発症リスクが高くなる可能性があります。
社用車ドライバーが熱中症になりやすい理由を以下のようにまとめました。
- 冷房を切っての待機(アイドリングストップの指導や駐車場の条件による)
- 休憩が不規則または取りにくい
- 水分補給を忘れがち
- 照り返しや直射日光を浴びやすい運転席環境
- 健康的な不調に気づきにくい
運転中、「トイレが近くなるから」と水分を控えてしまうドライバーは少なくありません。
車内はエアコンの影響で想像以上に乾燥しており、気づかないうち脱水症状が進行し、熱中症のリスクが一気に高まります。
気温がそれほど高くなくても、駐車中の車内は短時間で高温になることがあるため、炎天下に停めていた場合は乗り込んだ直後の環境は非常に危険です。
また「暑さに慣れているから大丈夫」「昨日も何ともなかったから今日も平気」といった油断は、事故や体調悪化を引き起こす要因となるため注意が必要です。
今日から実践できる熱中症対策
では、ドライバー本人と企業側でどのような対策ができるのでしょうか?
実務に取り入れやすい対策を紹介します。
1.水分・塩分補給の習慣化
基本の対策は「こまめな水分と塩分の補給」です。
以下のような取り組みが有効です。
- 水筒・スポーツドリンク・塩タブレットを車内常備品にする
- 営業所や出発前点呼時に「水分摂取の声かけ」をルール化
- 車内で「飲み物を飲む時間」をあらかじめ設けておく
脱水は自覚しにくいため「喉が渇いてからでは遅い」という認識を社員全体で共有しましょう。
2.エアコン使用の明文化・推奨
燃費を気にして冷房使用を控えるドライバーもいますが、暑さによる集中力低下や体調不良の方がはるかに危険です。
- エアコンは「積極的に使ってよい」と周知する
- 停車中でも冷房の使用を許可</li >
- サンシェードや断熱フィルムの使用も推奨
暑さ対策は「我慢」ではなく「環境改善」が基本となります。
3.車内環境の工夫
次に、車内環境を工夫することで、熱中症を防ぐ方法です。
- サンバイザーやカーテンの装備
- 暑さ対策グッズ(クールシート、ネッククーラーなど)の支給
- 換気や窓開けによる空気循環の徹底
- 駐車位置はできる限り日陰を選ぶ
物理的な対策とともに、暑さ対策の「備え」があるかが重要です。
4.業務調整の仕組みづくり
社内全体で一人ひとりのドライバーを支えることが大切です。
以下のような仕組みが社員の安全を守ることに繋がります。
- 朝の出発前点呼で体調確認(顔色・食事・睡眠など)
- 外勤・配送ルートを柔軟に見直し、休憩を挟みやすくする
- 高齢者・持病を持つドライバーへの配慮(無理な出動をさせない)
- 体調変化が見られたらすぐに交代・帰社できる体制整備
社員任せにせず、企業側の判断・支援体制が不可欠です。
夏の安全運転は「健康管理」からはじまる
企業にとって「安全運転の徹底」は常に重要なテーマですが、夏場においてはその前提として「健康状態の管理」が非常に重要になります。
どれほど優れた安全運転支援システムを搭載していても、体調不良による判断ミスを完全には防げません。
暑さによる判断力低下、集中力の途切れ、イライラ感の増幅など、熱中症は心身両面に影響を与え、事故やミスの温床になります。
企業がしっかりと熱中症対策を講じることで、社員の命と安全、そして企業の信用を守ることができます。
企業の「備え」が事故を防ぐ
熱中症は「防げる事故」のひとつです。
こまめな水分補給の促進や車内環境の整備、社員の体調への気配りは、どれもコスト以上の価値をもたらします。
この夏、熱中症対策を「個人任せ」にせず、社内全体のルールや習慣として整備していくことが、法人としての責任ある行動です。
猛暑が続くこの時期だからこそ、あらためて「健康と安全」の見直しを企業として実践してみてはいかがでしょうか。
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