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Bさん
就活を進めるうえで企業研究は欠かせないものと認識しているが、具体的なやり方が分からず困っている大学生。
神奈川トヨタ自動車 リクルート室 室員
神奈川トヨタ自動車の採用担当。 トヨタモビリティ神奈川で営業職を経験したのち、採用担当へ。 現場経験を活かし、より”リアルなノウハウ”で就活生をサポートします。
突然ですが、就職活動において企業研究は何のために行う必要があると思いますか?
その企業の理念や事業内容を理解して、自分に合っているか判断するため…ですか?
もちろん、それも大切なポイントです!ほかにも、企業研究をしっかり行うことで採用者の視点を理解し、就職活動を有利に進められるメリットもあるんですよ。
採用者の視点。要するに、企業がどのような人材を求めているのか見極めることができるんですね!
その通りです。今回は、内定に直結する効率的な企業研究のやり方をご紹介していきます。
企業研究の目的とは
企業研究には、以下のような目的があります。
- 業界内で自分に合う企業を見つけるため
- 志望動機を明確にするため
- 自分のキャリアを明確にするため
業界内で自分に合う企業を見つける
志望する企業を絞っていくために、企業研究は欠かせないステップです。
やりたい仕事が明確になっていても、業界内にはさまざまな企業があり特徴も異なります。
企業について調査し特徴を理解することで、自分に合う企業を絞り込んでいくことができます。
志望動機を明確にするため
就職活動の選考では、志望動機が重要視されます。
「なぜその企業でなければいけなかったのか」「同業他社ではなく、この企業を選んだ理由」を明確に答えられるようにしておく必要があります。
企業に対する理解が浅いと、面接担当者に「企業の考え方に共感していない」「企業の特徴を理解していない」 と判断されてしまうので注意しましょう。
自分がその企業にとって有益な人材であることを理論的に説明するためにも、企業に対する深い理解が必要です。
自分のキャリアを明確にするため
企業への就職はゴールではなく、社会人としてのスタートです。
そのため、入社後のスキルアップやキャリアアップについても考え、自分がどのようなキャリアを歩んでいきたいのかを見通しておくことも大切です。
企業研究を通じて自分が理想とする暮らしや人生を実現できそうか、希望するキャリアを築いていける企業なのかを見極めていきましょう。
企業研究ノートを自分なりにまとめる
企業研究で調べた内容は『企業研究ノート』としてまとめておきましょう。
企業の比較をする際にも役立つ重要な資料となるので、ぜひ作成してみてください。
ここでは、企業研究ノートの具体的な作成方法をご紹介します。
- 企業研究ノート の書式
- 企業研究ノートに記載したい情報
企業研究ノートの書式
企業研究の内容をまとめる際に使えるツールとして、以下のようなもの があります。
- 大学ノート
- ルーズリーフ
- パソコン
大学ノートは安価で持ち運びにも適しており、自由な書き込みが可能。B5やA5サイズであれば安価で持ち運びにも便利です。
ルーズリーフはページの差し込みや付け足しが可能なので、企業説明会やインターンシップへ参加した際に情報が増えてもきれいにまとめておくことができます。
パソコンはテンプレートを作っておくと制作しやすく、修正などもしやすいのでおすすめです。
また、管理もしやすいので後から見返しやすく効率的に企業研究できるメリットがあります。
継続的に活用できるよう、自分が使いやすいと思うツールを選びましょう。
「Microsoft Word」や「Googleドキュメント」 といったツールを使えば、普段持ち歩くスマートフォンやタブレットからも編集・確認できて移動時間の有効活用が可能になるのでおすすめです。
企業研究ノートに記載したい情報
企業研究ノートには以下のような情報をまとめておくと良いでしょう。
主に企業の規模感や価値観などをまとめ、自分とマッチするかを意識して比較していきます。
- 基本情報
- 経営理念
- 業績
- 事業内容の特徴
- 企業の強み
- 企業の弱点や課題
- 同業他社との違い
- 求める人物像
- 社風
- 将来性
- 給与・年収
- 福利厚生
- 勤務地・転勤の有無
- 就業時間・休日
- 選考フロー
- 所感や疑問点
基本情報
まずは企業の基本情報・社風を把握しておきましょう。
- 企業名
- 創業年
- 本社所在地
- 業界
- 従業員数
正式名称を正しく記入して、間違いのないように覚えていくことがポイントです。
本社所在地や従業員数などは丸暗記する必要はありませんが、ざっくりと覚えておくと良いでしょう。
企業名は略称や通称ではなく、正式名称を正しく覚えておくようにしましょう。
経営理念
経営理念とは、企業の考え方や信念に基づき、企業の活動方針を明確化したものです。
経営者の考え方を理解しておくという意味で、重要な項目であるといえます。
実際に入社したあとでも、経営理念に基づいた行動が求められます。
企業の根本的な価値観がわかるので、自分にマッチするかを見極めることにもつながるでしょう。
業績
自分が入社を希望する 企業ともなると、近年の業績についても調べておくようにしましょう。
新型コロナウイルス感染拡大をはじめとした情勢の影響を受けている企業は少なくないため、過去数年分の業績を確認しておくと良いでしょう。
業績に関しては、競合他社と比較してまとめておくと規模感が分かりやすいのでおすすめです。
事業内容の特徴
企業の事業内容として、どのような仕事をしているのかを調べておきましょう。
企業によっては、複数の事業を展開していたり、一般的には認知されていない事業を行っている場合もあるので、必ずチェックしておいてください。
求人サイトに掲載されている企業であれば、求人サイトに細かな情報が載っているケースもあります。
同業種でも事業内容が微妙に異なるケースはよくあります。入社後の仕事に関わってくる部分なので、思い込みで判断せず正確な情報を把握しておくことが大切です。
企業の強み
企業の強みは、ホームページで発信されていたり、求人広告に記載されていたりすることが多いです。
企業の強みとなる具体例には、以下のようなものがあります。
- 海外事業にも精通している
- 商品のラインナップが充実している
- 若者への戦略で成功している
- 女性管理職の割合が高い
企業の強みを的確に理解できれば、志望動機を考える上でも役に立ちます。
企業の弱点や課題
企業の弱点はホームページには記載されませんが、面接ではよく問われる内容です。
就活や転職サイトで課題や弱点が書かれている場合もありますので、参考にしてみると良いでしょう。
企業の弱点や課題として、以下の例が挙げられます。
- インバウンド需要に対応できていない
- カスタマーサポートが上手く機能していない
- 大企業とのつながりが薄い
同業他社との違い
就職活動で企業を選ぶ際には、同業他社との違いを明確にしておかなければいけません。
志望動機を作成するときも、ライバル企業にはない、応募する企業ならではの特徴をおさえて作成すると、より志望度が高く伝わるでしょう。
同じような事業内容でも、評価制度や社内の雰囲気に違いがあるので、細かな部分まで比較してみましょう。
求める人物像
企業が求める人物像とは、企業が成長・発展していくために必要な人材の能力や特性を具体化したものです。
企業は学生が求める人物像に合っているかを、選考を通して判断していきます。
自己PRやガクチカ (「学生時代に力を入れたこと」)では、この内容に沿ったものを含めてアピールできると好印象です。
企業が求める人物像と合っていなければ、入社後にミスマッチを感じ苦しい思いをする可能性もあります。
納得感を持って自分のキャリアを構築するためにも、求める人物像の確認は重要です。
社風
社風とは、企業ごとの文化や価値観、雰囲気やスタイルを指します。
たとえば、ベンチャー企業であれば「社歴に関わらず、誰でも活躍できるチャンスがある」「積極的に新しいことにチャレンジさせてもらえる」といった傾向があります。
インターンシップに参加したり、企業独自の会社説明会に参加したりして、実際に仕事をしている人の話を聞くとより分かりやすいでしょう。
将来性
将来性がある企業を選ぶことで、雇用が安定していたり社会貢献度が高かったりと、 やりがいを感じやすいメリットがあります。
将来性を判断する主なポイントとして、以下の点を確認してみましょう。
- 業績を伸ばしている
- 主要取引先に大手企業や、多様な業者が含まれているか
- 問題点や課題 を打破する戦略・経営戦略があるか
- IT技術を駆使した事業を展開している・展開予定があるか
正確な情報を知る方法として、IR(投資家向け情報提供)を確認しておくのもおすすめです。
少し難しく感じるかもしれませんが、IRには数年~数十年後の経営計画やマニュアルレポートが記載されているので、企業の具体的な将来性を把握するには最適な資料といえます。
給与・年収
収入は生活と切り離せない重要なものなので、将来の見通しを立てるためにも必ず把握しておきましょう。
ここで注意したいのが、募集要項に表記されている月給です。
多くの場合、記載されている月給は総支給額(税金などが引かれる前の金額)です。実際には税金や保険など で数万円差し引かれた金額が手元に入ってくる点を理解しておきましょう。
また、残業代は含まれているのか、昇給のペースはどうなっているのか、といった内容も調べて企業研究ノートに記載しておいてください。
福利厚生
福利厚生とは、企業から 社員やその家族のために提供される賃金以外の報酬やサービスのことをいいます。
福利厚生の種類は企業によって異なりますが、多くの企業で雇用保険や健康保険などが導入されています。
また、家賃補助(住宅手当)や社員食堂など、暮らしに関わる補助もあれば、資格取得のためのサポート制度などスキルアップに繋がるような福利厚生もあります。
給与が求める基準より少し低くても、家賃補助などの福利厚生を含めると、自分の理想に近い企業だったということもあるでしょう。
企業研究ノートにまとめる際は、自分が求める福利厚生にチェックをいれるなど、重要視したいポイントを抜き出してまとめることも大切です 。
福利厚生はあくまで付加的な要素なので、内容や待遇について深く追求することはあまりおすすめしません。
とはいえ、自分の生活に関わる重要なことなので、企業ごとにどのような違いがあるのかノートに記して分かるようにすると良いでしょう。
勤務地・転勤の有無
勤務地にこだわりがある場合は、必ず調べておいた方がいい項目です。
「勤務地はどこでも良い」という場合でも、全国転勤がある企業だと思わぬ場所に配属されてしまうケースもあります。
入社前は大丈夫と思っていても、入社して間もないうちは慣れない仕事や慣れない土地 での暮らしに負担を感じる人は少なくありません。
転勤の有無や頻度、可能性のある都市についても確認しておきましょう。
就業時間・休日
プライベートを重視する場合は、就業時間と休日も重要なチェックポイントです。
月の残業時間、有給休暇日数や有給取得率を調べて企業研究ノートにまとめておきましょう。
実際に働いている人の声を聞く、OB・OG訪問で質問をしてみるのも一つの方法です。
「完全週休二日制」なのか「週休二日制」なのかも確認しておきましょう。週休二日制の場合は月に数回、休みが週一日だけになることがあります。
選考フロー
選考フローとは、「募集→書類選考→面接→内定→入社」などの選考の流れです。
企業によって異なるので、段階ごとでの対策を強化するために確認しておいた方がいいでしょう。
- 書類選考→適性検査→グループ面接→二次面接→最終面接
- 書類選考→適性検査→一次面接→二次面接→最終面接
所感や疑問点
企業ノートでは、決まった項目だけでなく疑問点などを自由に書き込めるスペースも確保しておきましょう。
企業研究を進めていく段階で、「この企業は自分に合っていそう」「キャリアアップ制度の仕組みがよく分からなかった」など感想や疑問点を持つはずです。
同業他社との比較にもなりますので、広めにスペースを空けて所感を書き出し、疑問点は早めにクリアにできるようにしておきましょう。
疑問に感じたことは、面接で質問して解消する方法もあります。ただし、少し調べれば分かるような内容の質問はマイナスイメージを与えてしまうので要注意です。
企業研究のやり方
企業研究をしたくても「どこから情報を集めればいいかわからない」という方も多いでしょう。
ここでは、企業研究のやり方・具体的な情報の集め方を紹介していきます。
- 企業のコーポレートサイトを確認する
- 会社説明会に積極的に参加する
- インターンシップで理解を深める
- 経営者の取材記事や書籍を読む
- 座談会やOB・OG訪問で生の情報を集める
- 業界地図で競合他社と比較する
企業のコーポレートサイトを確認する
基本的な情報は、コーポレートサイトから収集できます。
コーポレートサイトとは、企業の基本情報を掲載した「企業の公式サイト」のことを指します。
メーカーや商品販売を行っている 企業では、商品サイトとコーポレートサイトが別で設けられていることもあるので、どちらもチェックしておきましょう。
コーポレートサイトでは、企業概要や事業内容はもちろん、プレスリリースなども確認できます。
そのほか、代表者や企業理念なども企業を理解するために確認しておくべき部分です。
コーポレートサイトの採用ページでは募集要項のほか、働いている人たちのインタビュー記事が載っていることも多いので、入社後のイメージが湧きやすいです。
会社説明会に積極的に参加する
会社説明会は、企業の雰囲気を肌で感じるチャンスです。
実際に仕事をしている人の話を聞けるので、積極的に参加して質問 してみましょう。
キャリアステップや休暇制度、福利厚生などを聞いて、入社した後の自分の姿を想像してみましょう。
インターンシップで理解を深める
インターンシップとは、興味のある企業で実際に働いたり、訪問したりする職業体験です。
インターンシップに参加することで、説明会やセミナーよりも詳しく企業を知ることができます。
また、企業によっては実際の業務に近い内容を体験できるため、気になっている企業のインターンシップには積極的に参加しましょう。
働き方が合うか判断する重要な機会になりますし、社員の方と親しくなれば採用情報には書かれていない実情を聞けるかもしれません。
インターンシップの期間や内容は、企業によって異なります。希望する企業すべてに参加できるわけではないので、優先順位を決めて検討しましょう。
経営者の取材記事や書籍を読む
研究対象としている企業の経営者の取材記事や、出版書籍があれば読んでみましょう。
どれだけ歴史が古い大企業でも、創業者の理念や創業当時の社風は根強く残るものです。
創業背景や企業の歴史を知れば、違った側面から企業研究ができます。
今後の事業展開など、書籍や取材でしかわからない内容を知れるかもしれません。
なお、企業の実情については書籍だと情報が古くなりがちなので、ビジネス雑誌の最新号やメディアの情報から鮮度の高い情報をキャッチしておきましょう。
座談会やOB・OG訪問で生の情報を集める
企業の座談会やOB・OG訪問は、社員に直接質問ができる機会です。
社員目線での1日のスケジュールや具体的な業務など、リアルな現場の声を聞けます。
「入社後に感じたギャップがあるか」といった就活生目線での質問も気軽にできるメリットがあります。
OB・OG訪問の時間は限られているので、あらかじめ質問したい内容を用意しておくのがおすすめです。
「学生のうちに取得しておいたほうが良い資格はありますか?」「有給休暇は取得しやすいですか?」など、気になることをまとめておきましょう。
業界地図で競合他社と比較する
業界地図とは、業界ごとに主要な企業の順位・業績・提携関係などを「地図」にして、視覚的にわかりやすく解説したものです。企業をとりまく状況、業界の規模、今後予想される動きを知ることができます。
引用:東洋経済STORE
企業研究で業界地図を活用すると、自分が対象としている企業の業界内での立ち位置がわかります。競合他社と異なる点や優位点についてなど、客観的に把握できるようにしておきましょう。
企業研究を内定に繋げるポイント
ここでは、企業研究がどのように就職活動へ影響するのか、どのように活かしていけば良いのかをお伝えしていきます。
- この企業だからこその志望理由を明確にする
- 自分自身が活躍できる場かを考慮する
- 情報を取捨選択する
この企業だからこその志望理由を明確にする
企業研究をしても、ただ丸暗記するだけでは、面接はうまくいきません。
たとえば、踏み込んだ質問をされた際に自分の考えや気持ちが入った返答ができないと、面接官にあなたの強みや志望意欲が正しく伝わりません。
志望理由を明確にするには、同業他社との比較をしておくことがポイントです。
他社とは違う企業の魅力を明確にして、「なぜこの企業でなければいけないのか」をはっきりと答えられるようにしておきましょう。
自分自身が活躍できる場かを考慮する
企業研究は、業界内で自分に合う企業を明確にするという目的があります。
自分が「将来活躍できる」あるいは「挑戦してみたい」と思える企業を見つけて、内定を勝ち取らなくてはいけません。
「自分自身の強みが活かせるのか」「活躍できる企業なのか」という視点で、企業研究した内容を定期的に見直してみてください。
情報を取捨選択する
企業研究で得た情報の中から、自分に必要な内容を取捨選択することも重要です。
情報を整理することで、企業選択の最優先事項が明確になったり、自分なりの観点に気付くことができるでしょう。
幅広い観点から企業に対する理解を深めて志望先を絞り、選考に向けて万全の体勢で臨みましょう。
企業研究の際の注意点
企業研究を行う際は、以下の注意点を意識してください。
- 企業研究の真の目的を見失わない
- 企業の悪い面にも目を背けない
企業研究の真の目的を見失わない
企業研究の目的は、企業への知識を深めて自分に合う企業を見つけることです。
試験勉強のように、より多くの知識をインプットすれば内定がもらえるというわけではありません。
あくまでも企業研究は就職活動のひとつのステップであり、自分自身のために行っているものであると忘れないようにしてください。
企業の悪い面にも目を背けない
企業研究をしていると、企業の良い面に多く気付かされますが、悪い面に目を向けることも重要です。
企業の課題や弱点を理解するのは、就職活動をしていく上でも重要なプロセスとなります。
課題や弱点を理解し自分なりに打開策を考えておくことで、面接時に他者との差別化を図ることも可能になります。
企業の良い面だけを見ている学生よりも、配属リスクや想定される仕事上でのストレスなど、マイナス面も認識したうえで志望する学生のほうが採用する側としても安心感があるといえます。
企業研究で自分に合う企業を見つけよう
企業研究は、自分自身の理解を深めるために志望している企業から徹底的に行いましょう。
就職活動は情報戦と言っても過言ではありません。多くの情報を集め、必要な内容を整理してまとめていくことで、企業理解を深めて選考対策にも役立てられます。
企業研究は自分自身のためのものなので、この記事で紹介していない項目が増えても問題ありません。
入社後のミスマッチを防ぎ、長い社会人人生のキャリアを決めていくためにも、慎重に企業研究を行って後悔のないように準備しておきましょう。